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Wildlife

Far north east , for live field.

北極圏や南極大陸の極域、さらには伝統文化の世界まで旅をしながら撮影を行う写真家・福本 玲央が知床ねむろを訪れた記録。流氷が押し寄せる冬、野生の匂いを感じられる夏。それぞれの季節に異なる風景と向き合いながら、彼はどんな瞬間を捉え、何を感じたのか。自然の美しさや人々の営み。通り過ぎるだけでは見落としてしまい、住んでいるとつい忘れてしまうこの土地の豊かさ

福本氏が実際に記録したノートを覗きながら、知床ねむろをともに旅する。

 

Far north east , for live field. (2024 summer)

 

ーーー もしも誰もが、人に教えたくないほど美しい秘密の場所を持っているとしたら それは僕にとって⚪︎⚪︎⚪︎です ーーー

僕が強く心を惹かれる人物であり、地球を記録し続けた写真家が残した言葉。アラスカに魅せられ、アラスカに移り住み、アラスカに愛されたこの人物が秘密にしたいくらい美しい場所とはどんな場所なのだろ。僕の心体(からだ)の中に長年染み付いていた好奇心が、ここ南東アラスカの地まで連れてきてくれた。

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2024年8月15日 AM6:55 Sitka, PIONNER BAR
町の中心からやや離れた場所にあるPIONNER BARでコーヒーを飲みながら地元のおじさん達の話を聞いている。ここはfree coffee(珈琲無料)だからボートで暮らすのおじさん達のたまり場になっている。
その日の海のようす、町まで降りてきたクマの情報、恋愛事情もこの町の最新の情報が集まる。
ここで”秘密の場所”まで船を出してくれる人を探して会話を盗み聞きしたけど、やはり難しそう。

そんなに簡単な話ではないようだ、、、。

帰国後に読む本
Arseniev
A Japanese Glimpse Jirokichi
The Blue Bear
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結論から言うと、この旅で秘密の場所を訪れることは出来なかった。
しかし、僕の今までの人生で経験してきたそれぞれの点が線になっていくような、そんな素晴らしい旅だった。

帰国後、すぐに次の旅を予定していた。半年前の冬に訪れた知床ねむろへの再訪だ。
この旅の行程はカヌーで川を下り、野生のクマが生息する岩場を半島沿いに進む。限られた時間の中での最善を尽くすため、現地で共に旅をするゲンさんとスーさんと事前に電話で打ち合わせをした。
二人と旅をするのは初めてだったので、良い旅にするために二人のことを知りたくて、僕はそれぞれの好きな本を尋ねた。

 

ゲンさんが選択した一冊は、「エヴェレスト - 神々の山嶺」-
世界のさまざまな自然環境下での経験が豊富なゲンさんらしい本だと思った。
1000ページ以上に及ぶ合本版をこの旅に持参した。
(バックパックの軽量化のための努力が虚しくなってしまうほど重量感のある一冊だった)

スーさんに聞くと、「デルスウ・ウザーラ」、昔のロシアの冒険の話だという。
僕は本のタイトルをノートに記録した。打ち合わせの直後、すぐにデルスウ・ウザーラについて調べ、この本の著者がアルセーニエフという人物であることがわかった。その瞬間、僕は急いで日記の前項のページを探した。シトカのPIONNER BARで書いたのあの日のページだ。

Arseniev (アルセーニエフ)
僕が以前から読みたいと思っていたけれど読めていない本だった。
この著者の名前で記憶していた。

『デルスウ・ウザーラ 沿海州探検行』  アルセーニエフ 著

なぜメモを残したか、なぜ読みたいか、その理由も明確に覚えていた。
これは僕が惹かれる写真家、彼の愛読書である。

こうしてアラスカと知床ねむろの旅が繋がった。

9月14日  別海町 ヤウシュベツ川
朝6時に目が醒める。
朝8時スーさんと合流。

スーさんは愛馬たちと共にこの町で暮らし、この地に流れる雄大な河川をカヌーで下り、荒波のオホーツク海をカヤックで旅するほどの硬派なアウトドアマンだ。

僕たちはヤウシュベツ川上流から風蓮湖に向けてオールで舵をとった。
途中のスーさんの“秘密の場所”で休憩し、でデルスウ・ウザーラの話、アラスカの旅への好奇心、本の質問をしたこと、などたくさん話をした。スーさんがこの町に来た経緯や想い。強い信念と優しさとの間で闘う、スーさんの一面もとても素敵だった。

ここにきて、「おおらか」になった

別海町の特異な環境に魅力を感じた

裏庭、裏山の感覚で“俺の川”があること、だから愛着があって、大切にする。

濃厚な自然

 

9月16日  野付半島
野付半島に生息するゴマフアザラシ。
夏は外敵のいない浅瀬の内湾で暮らし、冬は内湾が凍るため外湾のオホーツク海、羅臼方面の流氷の上で天敵のシャチに気をつけながら生活する。出産は冬に行う。白い赤ちゃんはゴマ色や褐色になる。
落石にいるラッコは流されないように昆布に包まって眠る。
なぜ落石にいるのか、それは昆布があるから
なぜ昆布があるのか、それは太平洋だから

漁港の観光船乗り場では野生動物の生態について教えてくれたオガタさん。
ネイチャーセンターの売店でも働いていた。レストランではお皿洗いもしていると言った。と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然保護への取り組みと葛藤。

僕は僕にできる方法で世界をより良くしたい。

 

9月16日 中標津 開陽台
軽トラの荷台の上で仰向けになり寝袋に包まれながら、星の動きを追った。

人工衛星が何度も頭上を超えていった

 

9月18日 根室 落石三里浜
落石岬を歩く。
漁港、集落を抜けてすぐに広がる多様で壮大な自然風景。
人と自然の距離感が魅力だと感じた。

三里浜でテントを設営していると、蝦夷鹿の群れが通り過ぎていった。

 

9月22日  標津 ポー川史跡自然公園
世界最大規模の古代住居跡が残る。
鮭が遡上し、森に生息する野生動物。資源が豊かな自然環境に恵まれているため、この土地では太古から人間の営みがあった。
長い歴史の中で伝承される文化や伝統。

 

9月21日  羅臼
自然との関わり方
漁のことだけでなく、漁師目線で自然との関わり方、生き方について考える。
山を見たら海の中がわかる。
経験して積み重ねたものが進化する。

 

9月18日  相泊ーモイレウシ湾
朝5時45分 ゲンさんと合流
知床岬を目指しトレッキング開始。
出発して二時間、番屋を横目に石浜を歩き続ける。

午後、モイレウシ湾に到着。今日はここで野営をすることに決めた。
朝から歩き続け、汗で濡れた体を冷やすため。全裸でモイルス湾に飛び込んだ。普段、陽を浴びることのないだろう身体の隅々まで日光浴をした。

番屋の跡が残る

 

 

ベースキャンプを設営していると海の向こうから一艇のカヌーの姿が見えた。
スーさんだった。
偶然、近い日程で海からシーカヤックで岬へ向かっていたスーさんもこの日の野営の場所としてモイレウシ湾を選んだのだ。人間に出会うなんて思っていなかった最北東の果ての小さな入江で現れた人間が知っている人であることに驚き、嬉しかった。

スーさんはラジオの情報から天気図を描き、ゲンさんは食堂兼バーを建設して火を焚いてくれた。

スーさんのカヤックからビールやウィスキーをいただいた。

僕は焚き火を囲みながらかなり長い時間、アラスカの旅についての詳細を語った。

長く話しすぎてしまったと反省したが、それでも僕は自分の旅や人生の点が繋がっていくこと、アラスカからこのモイレウシ湾までがその流れの中にあること、これからも旅が続いていくことを伝える行為がしたかった。

気づいた頃にには空と海を照らす美しい満月が輝いていた。

 

 

Far north east , for live field.

https://youtu.be/jYGxeGfW9qw?si=bmUCHXWVn_yGKEYO

旅への好奇心は 世界に広がる美しい自然に惹かれている
北極圏や南極大陸の極域
原生自然環境に生きる野生動物たち
地球にはまだ美しい “世界”(ワイルドライフ)が広がっている
僕が暮らすこの国にも 素晴らしいワイルドライフが存在している
日本の北に位置する島 北海道
その最北東の地 知床ねむろ
希少な野生動物や特異な環境が生み出す地形
険しくも美しく
朗らかで濃厚な自然が広がっている
豊かさと美しさが調和された特別な場所だ
これほどの大自然が広がっている一方で
人間の営みと自然との距離が驚くほど近い
この特別な共存のかたちに 僕は感動せずにはいられなかった
資源が豊かな環境だからこそ この地には古来から人々が暮らし
自然の恩恵を享受してきたため
歴史や伝承が今も息づいている
この地は “手付かずの大自然” ではなく
人間と野生動物 自然が共存し
その繋がりを守り続けてきた特別な土地だ
旅を記録することで
美しい自然や人々
そしてこの素晴らしい世界を守り
この経験を次の世代に伝えていきたい
この地を旅して その想いをより深く感じた

僕はこれからも旅を続けていきたい

  • 記事を書いたライター
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Reo Fukumoto

北極圏、南極大陸の極域や原生自然環境のアウトドアフィールドからシャーマニズムなどカルチャーの世界まで旅をしながら撮影を行う。 旅や冒険の中で出会う、そこに存在する人々や風景の至福の瞬間を収める。

  1. Far north east , for live field.

  2. Que sera , sera

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